京の伝統工芸歴史と技術が織りなす職人業
京扇子とは、扇面、扇骨、仕上げ加工すべてを京都および京都近郊の材料を使い京都の職人で作られた扇子のことをいいます。京扇子の名称は京都扇子団扇商工共同組合が有し、組合員だけが使用できます。
歴史は古く、中国から平安初期に伝わったうちわからヒントを得て、文字を書くために使われた「木簡(もっかん)」から派生しました。当時、紙は大変貴重であり、様々なことを記録していた木簡は記録用として何枚も綴じ合わせていました。それが最初の扇「檜扇(ひおうぎ)」の生まれです。
桃山時代には現在のような技法が確立されたと言われています。現存されている最古の扇は元慶元年(877年)と記された京都東寺の千手観音の腕の中から発見された檜扇です。
江戸時代には烏帽子、冠作りと合わせて、「京の三職」として発展し、昭和52年10月14日から経済産業大臣により伝統的工芸品に指定されました。扇子完成までには骨作りから地紙づくり、絵付け、組み立てなど約88の工程があり、繊細で細かい作業になるため、それぞれが分業になっており職人さんたちが腕をふるっています。
有名な江戸扇子は江戸の材料で江戸の職人が作ったものです。形状や作り方に大差はありませんが、江戸扇子は1人の職人さんがすべての工程を作業するのに対し、京扇子は各工程に専門の職人さんが担当する点が一番の違い。
確かな手仕事から生まれる小さな工芸品には職人の技が随所に散りばめられています。表面的な美しさだけではなく、風合いや手にしっくりとなじむ持ち味等から自然と伝わる美しさは京扇子ならでは。
夏の涼を取る目的よりも、貴族の象徴として儀礼的に使用されており、檜扇、中啓、絹扇、舞扇が代表的な京扇子です。他にも冠婚葬祭で使用される祝儀扇や、香りを楽しむ白檀扇(びゃくだんおうぎ)など、沢山の種類があります。金銀箔、漆、蒔絵などが施されたものは、高級美術品として珍重されています。