京の職人衆 伝統を守り、今に挑む。 京の職人衆伝統を守り、今に挑む。

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京表具 宇佐美修徳堂

宇佐美直治

天命年間より本願寺の表具修復に始まる京表具の老舗。8代目次男として暖簾分け。

文化財の修復も、基本は紙を取り換えること

文化財の修復も、基本は紙を取り換えること

私の仕事は、ひとことで言うなら絵の修理屋さんですわ。美術館、大学、図書館といったところや個人のコレクターの方から依頼をいただいています。古い巻物や、本、屏風や掛軸などの日本絵画など中には重要文化財に指定されたものを修復することもありますね。修復の方法は、たとえば掛軸ですと下地の布から、絵の描かれた紙をまず外します。絵の裏にはいっぱい裏打ちされた紙があるので、それを一枚一枚はがしてめくっていき、色が付いている一枚ものにして、新しく裏打ちをしていくんです。東洋絵画の修復というのは要は紙を取り換えてやることなんですね。

私の仕事は文化遺産を残すためのリレーみたいなもの

私の仕事は文化遺産を残すためのリレーみたいなもの

修復を依頼された絵を見ると、たとえば2回ほど作業した作業があるな、と分かります。もっというと数百年の間に2回しか修復されていない、とも言えますし、まったく修復されていないものもあります。京都には江戸時代も明治時代も大正、昭和も、歴代うちらみたいな人間がいるんです。僕が死んだあとも、誰かが修復をするでしょう。後世に文化遺産を残す、バトンタッチというかリレーというか。もしくは僕のおじいちゃんがやった仕事を僕がまたやるような感じですね。

修復は“自分の空気”の中でやる

修復は“自分の空気”の中でやる

ですからプレッシャーみたいなものはもちろんあります。でもそのプレッシャーがある方がいいんですよ。集中できるという意味で。でも昼間は宅配や電話やら騒がしいし“空気が動いている”んで夜にやったりしてます。人がいると動いてて気配がありますでしょう? そんな時は“自分の空気”じゃないんです。

若いころ私は、都立博物館内文化修復センターにある宇佐美松鶴堂工房で指定文化財の修復に関わってきました。アメリカのボストン美術館やガードナー美術館など海外の美術館にそれぞれ半年ほど出向き、修復の技術指導などもいたしまして、2006年にのれん分けをしていただき宇佐美修徳堂として今に至ります。大英博物館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館など僕らのような人間がいますし、九割八分くらいは京都で修業をした人間ですね。

マンガ・アニメの原画の良さを京都ならではの佇まいで引き立てたい

マンガ・アニメの原画の
良さを京都ならではの佇まい
で引き立てたい

「京都式」では掛軸を作るのですが、掛軸というのは絵を尊重して引き立ててインテリアとしても成り立つようにするものといえます。まったく掛軸のことを知らないお方が見よう見まねで掛軸ってこういう感じ、というように作られたものとは明らかに違うものを作ることができると思います。その雰囲気というのはバランスなんですね、あとは佇まい。畳の部屋にかけるならこう、フローリングの場合ならこう、元の絵の縦横のバランスならこう、というものがあるんです。価値のある日本の絵画のように掛軸として高価なものにしようと思えばいくらでもできますが、それでは手に届かなくなってしまいます。でも、お手ごろな価格を考えても本物らしくすることはできるんです。それは高価でなくても本物の素材を選んで、これもバランスをとるんです。掛軸の軸に象牙を使えば高くなりますが、それを西陣の陶器を使うとか。陶器は陶器で象牙よりは安いですが、間違いなく京都の本物であるわけです。

マンガやアニメの作家さんからどんな絵が届くのか、とても楽しみなんです。その絵を見て、ポスターや本とは別の、その絵の魅力をより引き出すようなことが掛軸でできると思います。ですから、絵が来てから悩むでしょうね。「さて、どうしようか」と、使う素材や色を考えてバランスと佇まいを作っていければ。ある意味、重厚感がなかったらダメやと思っています。中の絵をどれだけかっこよく引き立てるかなんですね。

京の職人衆

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