京の職人衆 伝統を守り、今に挑む。 京の職人衆伝統を守り、今に挑む。

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印染 スギシタ 杉下永次

杉下永次

幟(のぼり)、旗、風呂敷、袢纏などの印染を行う。伝統的な糊を使った引き染、手擦染の可能性と技術を追求しつつ、同時に最先端の染の技術やコンピュータの応用・導入も積極的に行う。大本山 金戒光明寺御用達 紫雲会加盟。

印染、見たことありますか?

印染、見たことありますか?

印染(しるしぞめ)って聞いたことがない方もいらっしゃるかもしれませんが、皆さん一度は見たことがあると思います。風呂敷ですとか、法被、旗、浴衣、手ぬぐい、そういう染め物が印染の始まりです。普通の染め物と違うのは、その名前や家紋を目立たせるのが目的の染めなので、紫に白抜きとか藍に白抜きですとかパキッとした感じのものが多いんです。たまに着物の染め方と間違われるんですが、これが全く違う世界でして、着物の世界の人がうちらの仕事をしようとすると無地場がたくさんあって文字が大きくて、そんな仕事は難しいといわれますね。風呂敷や旗がそうですが、無地で同じ色で染めるので少しでもムラや濃淡があると凄く目立つ。それを均一にするのが難しいと言われています。

ウチも創業から80年を数えるほどになりました。昔は風呂敷やのぼりが多かったのですが、私の代で需要が変化してきて、意外とお祭りごとが盛んになってきてるんで、袢纏がメインであとはオリジナルでTシャツを作ったり、あと神社の幕ですとかがメインです。「そうだ京都、行こう」のCMに出ていた金戎光明寺さんの幕は全部ウチがやらせてもらっています。

同業者に不思議がられるくらいに技術を磨く

同業者に不思議がられるくらいに技術を磨く

そんな染めに幾つかやり方はあるのですが、ウチでは手擦染と引き染めをやっています。手擦染というのは、布の上に型紙を置いて、そこに色の付いた糊を塗っていくんです。引き染めというのはもっと昔からある手法で、白い糊で生地の上に柄や文字を描いて、その後染めるという方法。これは糊のところに染めが入らないので白くなるわけですね。糊置きは染めと白地のところが微妙に滲んだような優しい表情になるんですけど、今は印刷みたいにシャープさを求められて、味というよりB品やいわれることもありますわ。ですからウチも意地になって、シャープな方に技術を向上させて、同業者に何で糊置きでそんなシャープにできるの、ってくらいにこだわって研究もしてますし、手間掛けてやるようにしてます。

「このくらいの仕事でいいや」は許せない。

「このくらいの仕事でいいや」は許せない。

やっぱり、これだけの金額しかもらえないから、こんな仕事でいいや、っていうのが凄く嫌で。多くの職人がそうだと思うのですが、やっぱりいいものを作りたいっていう欲求があるんですよね、私に。お客さんや自分でB品やと思うは渡せないですよ。これは先代から受け継いだものだと思うのですが、やっぱりお客さまには基本ノーは言わないというのを鉄則にしています。自分が無理してできる範囲はノーといわない、出来る範囲で最大限無理します。それで、自分が作ったものを直接お客さんに売って「ああ、いいね、これ。もう一枚欲しくてまた買いに来たよ」なんて言われるとたまらなく気持ちいいんですわ。

伝統技法を残すために、新しいことに挑戦したい。

伝統技法を残すために、新しいことに挑戦したい。

袢纏とか旗のような特別なハレの日に使うものを作ってきたんで、普段から逆に普段使えるものを自分らの技術を活かして作ってみたいというのがありました。それでいて、印染でありたいっていうこだわりがあって。和柄のTシャツでも、中国の職人さんが手書きで花柄とか描いてるのを街で見ると、違うんやなぁ。違うなぁ、って。ですから、京都式のプロジェクトも、楽しみなんです。今までと全く違う世界の話で、アニメやマンガのキャラクターの魅力をどうやって印染の技法で出して行くことができるかという……ただ、どこまでできるんだろうという不安感は盛り盛りですが(笑)

私らが作る以上、アニメやマンガのキャラクターを染めるにしてもプリントとは違うものが出来ると思います。今の生活様式や文化に会わせて、伝統技術を残していきたいんです。京都式で手に取ってもらって「これが印染か、ああ、旗を、袢纏をこういう技術で染めてるんや、旗や袢纏も面白いな」と言うふうに戻ってもらえたらいいなぁと思うんです。大切なものを残したいがために仕事をやってる部分や、ちょっと自己満足的なところもあるんですよ。

京の職人衆

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