京の職人衆 伝統を守り、今に挑む。 京の職人衆伝統を守り、今に挑む。

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京うちわ 阿似波

饗庭智之

元禄2年創業以来、京うちわ一筋に伝統技法を守り累代にわたり継承。京うちわ随一の老舗。

実用的な道具から、観賞するものへ

実用的な道具から、
観賞するものへ

京都の伝統工芸の多くがそうであるように、うちわもまた分業なんですね。取引先には紙を用意してくれる業者さんや竹を用意してくれたり、それを割ってくれる業者さんがおられるわけです。ですが「阿似波」では、4人の職人がおりまして、組み立てなどをやっております。僕は一つひとつのパーツをデザインしたり図柄を考えたり、企画を請け負う役割を担っています。

うちわというと、もちろん煽いで涼むためのものですが、「阿似波」では、飾りうちわとして透かしになっているものも作っています。表面の柄に合わせて紙を切り、裏は全面に紙を貼ったものや、一部が完全に透かしになっているものはもちろん、全面的に透かしを施したものはウチが初めてです。それぞれの色の紙を使ってその形に切って張り合わせるわけですが、たとえば花びらが白と藤色で葉が緑なら3色ですから、3つの紙を用意して切り抜く必要があります。それぞれ重なっている部分は境目にあわせて切らないと紙が重なって厚くなってしまいますし、完全な透かしだと裏から貼る紙も同じ形に切り抜かなければなりません。そういうインテリアになるうちわで知られるようにもなりました。

普通の人間のアイデアはたかが知れている。だから、新しいコラボレーションが楽しみ。

普通の人間のアイデアはたかが
知れている。だから、新しい
コラボレーションが楽しみ。

京うちわの「阿似波」は、僕で十代目になります。創業は元禄2年、1689年で、今の場所に移転しておよそ200年はたっております。代を継いだのは26歳の時で、大学を出まして京都の信用金庫に勤めていました。京都は信用金庫の影響力が強いので、地域の産業や経済活動みたいなものを勉強できるだろうと思ったのです。京都の伝統工芸その道何十年という人にも会えますし。何年かお勤めしたあとに「阿似波」を継いだのですが、特に親父から継いでくれといわれたわけではなくて。まぁそれまでの刷り込みみたいなもので何となく当たり前のように家業に入りました。

「阿似波」のうちわは凄く伝統的な柄ですね、と言われることがよくあります。ですが、実際は毎年僕が新しく考えている新柄もあるわけです。それでも伝統的に見えるのは、僕にオリジナリティがないからかもしれません。普通の人間が考えつくことなんてべらぼうにあるわけではありませんから。一人で出来る発想なんてたかが知れていますよね。

うちわは表現のキャンバスでもある

うちわは表現の
キャンバスでもある

親父からずっと言われていたことがありました。肩に力が入っているとすぅーっと涼しげなものはできへんぞ、と。つまり暑苦しいもんを造ってはいかんというわけです。削げるものは削いで、それが自然と京都的なものになっているような気がします。昔も当時でいうところの時代の先端の画家や職人さんに、うちわ屋が図柄をお願いして、それがうちわになって時間とともに京都的なものを形作っていったのです。ですから、今回の「京都式」で、マンガやアニメを題材にその原画を描かれている方の創造性ですとか表現者の力のようなものをお借りして新しいうちわの良さを生み出して行ければと思っています。そういう意味でうちわはキャンバスなんです。とはいえ、そうしてでき上がったものはどこか京都らしいものになると思っています。

うちわの世界を広げていきたい

うちわの世界を
広げていきたい

昔はうちわは生活必需品だったのですが、今は違います。だから出番が少なくなって数も出なくなったともいえます。マンガやアニメの作家さんといった表現者の方々とやっていくなかで、うちわの出番が増えて行き、伝統工芸としてのうちわの世界を広げていければと思っています。

京の職人衆

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